Smiley face
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翁家和助=山本佳代子撮影
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 寄席で落語の合間に出てくる太神楽(だいかぐら)曲芸は、傘の上で升を回したり輪を投げて交換したり、と目に楽しい。なかでも、翁家(おきなや)和助(わすけ)(47)は異彩を放つ。伝統に飽き足らず、活動の幅を自ら押し広げている。この道に進んだのは、意外にも公務員志望だったから、だそうで。

 大きな獅子舞が、真ん中で躍動していた。端っこに曲芸をする姿も。

 校内に貼られたそんなポスターが目にとまったのは、国立劇場による「太神楽」の研修生募集だったからだ。

 高校3年のある日、進路指導の先生から卒業後の就職について話があった。安定した仕事として公務員を勧められ、意識にすり込まれていた。ポスターを前に、こう言われたことを思い出した。「伝統芸能の雅楽奏者もその一種だ」。先生も知識があいまいだった。

 地元の東京都多摩地区で獅子舞やひょっとこ、おかめの踊りに親しんでいた。太神楽はガガクと読むのかな。国立劇場が募集するなら、公務員かな……。おおらかな勘違いから1995年、初の太神楽研修生になった。

 ある日、笛を渡された。吹こ…

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