初公判で起訴内容を認めた片山肇被告=2025年5月22日、東京地裁、絵と構成・小柳景義

 夫の様子がおかしかった。食欲もない。元気もない。心配した妻が具合をたずねると、こう言った。

「体調は悪くない……。だけど、実は……」

 三井住友信託銀行の部長だった夫は、株のインサイダー取引という不正をした、と打ち明けた。

 その後、この不正行為を東京地検に自ら伝え、証券取引等監視委員会の強制調査を受けた。会社は懲戒解雇された。

 夫の片山肇被告(55)は2025年3月、金融商品取引法違反の罪で在宅起訴された。5月の初公判では、起訴内容を認めた。

 金融機関の要職にありながら、なぜインサイダー取引をしたのか。

 法廷での証言や証拠などからたどる。

企業500社を担当、重要情報を決裁

 被告は合併前の中央信託銀行…

共有
Exit mobile version