(8日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 横浜5―0敦賀気比)
春夏連覇をめざす横浜は重圧のかかる初戦で、全くスキを見せなかった。
一回の守り。2死二塁のピンチを招いた。次打者のぼてぼての打球は三塁方向へ転がる。三塁手の為永皓はダッシュしながらグラブのない右手でつかみ、そのまま一塁手へ送球。この好守で得点を与えず、直後に2点を先取した。
敦賀気比の東哲平監督は「ああいうところで素晴らしい送球が出るとは」と脱帽した。五回1死満塁では、左飛をつかんだ奥村頼人がストライク送球で三塁走者の生還を許さず。間一髪でアウトにして、無失点でしのいだ。
現チームは昨秋の新チーム発足以降、明治神宮大会と春の選抜大会を制覇。その後の関東大会準決勝で敗れるまで公式戦27連勝を記録した。土台にあったのは、あらゆる場面や打球を想定した「緻密(ちみつ)な守備」。相手がほしい得点を許さず、好機を着実につかんできた。2020年春に母校の再建を託された村田浩明監督が注力してきたことだ。
村田監督が「あれはうれしかった」と目を細めたワンプレーがある。為永の好守の直後の、一塁手の小野舜友の動きだ。実際は為永の一塁送球で3アウトになったが、小野は一塁塁審の判定を聞くまでもなく、本塁に送球。捕手の駒橋優樹は、本塁生還を狙った二塁走者をミットでタッチしにいった。
選手たちは万が一、アウトが取れないことも想定し、日々の練習から「第4アウトを奪う」と意識してきたという。記録に残らないプレーにも、王者たるゆえんがある。