かすみたなびく月夜の深山幽谷。岩山は鉱物の結晶のように面が強調され、サインペンを思わせる均一な線で縁取られている。
岩肌に生えた植物までが綿密に描き分けられているのに対して、ベローンと布を垂らしたような滝とモクモクの霧はシンプルで漫画的。一つの風景の中にさまざまな技術を詰め込んだ、奇想の画家・曾我蕭白(そがしょうはく)の面目躍如だ。
しかもこの絵、よく見るとただの山水画ではない。画面下の橋の上に小さな人物が3人いて、何やら楽しげに話している。
岩山に滝、橋を渡る3人の人物とくれば、知っている人なら「虎渓三笑」なる中国の故事だとピンときたはず。
名勝・廬山(ろざん)の寺に…