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新年度を前に、副教材について話し合う教員たち=2024年4月3日、石川県輪島市の輪島中学校、上野創撮影
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 能登半島地震の被害が大きかった奥能登4市町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)では、新年度を迎えても被災した自校の校舎が使えず、他校に間借りする学校は小学校9校、中学校1校に上る。特に輪島市では、六つの小学校の児童が輪島中学校に集中し、総人数は校舎の想定人数を大幅に上回る。学校は受け入れ態勢の整備に追われている。

 4月3日午後、輪島中には6小学校の校長や教員が集まり、入学式や始業式の流れ、スクールバスの時刻を含めた日課表などを確認していた。

 人数分のげた箱がないため、袋の持参を求めるという話も伝えられた。その後、新しく配布する教科書を手にとったり、副教材をチェックしたりする姿があった。

 市教委によると、地震前の輪島中の生徒は330人ほど。校舎は1クラス40人が1学年4クラス、通常であれば最大で計480人の生徒が学べる想定だ。

 だが4月からは市内に残った約240人の中学生に加え、市中心部の6小学校の児童約340人も同じ校舎で学ぶ。避難者も5日時点で261人残っていて、日中は総勢800人以上が一つの学校敷地内で過ごすことになりそうだ。

 市教委や輪島中によると、音楽室などの特別教室も通常の教室として活用し、図書室内には各小学校のために臨時の職員室を設ける。体育館やグラウンドの一部は避難者がいたり陥没していたりして使えないため、体育の授業は広めの部屋を使うなど、できる範囲で行う考えだ。

 遠距離通学となる児童の「足」も課題だ。市教委によるとスクールバスは確保できそうだが、運転手が足りないという。

 担当者は「運転手も被災して働けない人が多い。各家庭からスクールバスを回してほしいという要望が上がってきているが、あふれてしまっている状況だ」と話す。

 輪島中への間借りは1学期だけの予定。市教委は2学期までに、市中心部に6小学校の児童が学べる仮設校舎を建設する考えだ。また市内の他の地区で、小学校と中学校1校ずつが他校に間借りする。

 奥能登では他に、能登町と穴水町でそれぞれ一つの小学校が近くの中学校に間借りする。珠洲市はすべての小・中学校が自校で授業するという。

 小中学校の間借り授業は過去の被災地でもあった。岩手、宮城、福島の各県教委によると、2011年の東日本大震災では計82校の小・中学校が地震や津波の被害で校舎を使えなくなり、他校だけでなく、廃校の校舎や公共施設を使って授業を再開した。

 熊本県教委によると、16年の熊本地震では4校が間借り授業をした。トイレや体育館、保健室や音楽室などが足りず、様々な活動が制限された。ストレスをため、暴力的な言動を見せる子もいたという。

 東北大学の佐藤健教授(学校防災)は、間借り授業で複数の学校が一緒に活動する場合、人数が少ない学校の子どもが肩身の狭い思いをすることがあると指摘。「子どもたちはただでさえストレスがたまっている。異なる集団が集まって摩擦が起きないか、大人がしっかり目を配らないといけない」と話す。

 輪島中に間借りする6小学校の中には、児童数が100を超える学校もあれば、1桁の学校もある。「施設や備品だけでなく、教職員の人手も含め、現場に足りないものがあればすぐに供給する態勢が必要だ」と話した。(上野創、狩野浩平、滝沢貴大)

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