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西博和弁護士

 この国のかたちを決める総選挙が近づいてきた。少子化の影響で大学の学費は値上がりを続け、家計は苦しくなる一方だ。大学生の2人に1人が奨学金を利用している北海道で、奨学金の問題に長年取り組んでいる弁護士の西博和さん(42)に、これからの政治に求めることを聞いた。

高等教育の無償化

政府は金銭的理由で大学や高専などへの進学を諦めないための「修学支援新制度」を導入している。入学金や授業料の免除、給付型奨学金などの支援対象は年々拡充されているが、親の所得水準など適用条件があり、欧州のような完全無償化は実現していない。

 ――2013年、多額な奨学金の返済が道内の若者の重荷となっている実態を明らかにしました。

「私もかつて奨学生だったので奨学金制度は知っているつもりでした。弁護士になってからも数年間は返済しており、大変さは自覚していました。でも、札幌弁護士会で電話相談を実施するまでは返済を滞納した人たちが日本学生支援機構から訴えられるケースが増えていることは、知りませんでした」

「滞納が3回続くと、個人信用情報に事故情報が記載され、いわゆる『ブラックリスト』に載る状態になります。クレジット会社に情報が共有されてローンが組みにくくなる。延滞したら9カ月で裁判を起こすという通知が届く。若者たちには相当なプレッシャーになっていると感じ、解決に向けて『北海道学費と奨学金を考える会(インクル)』を設立しました。インクルはインクルージョン(包摂)の略称。いろんな考え方を持つ人たちが集まり、奨学金問題に取り組んでいきたいという思いを込めました」

 ――16年には、道内の大学生の奨学金の実態調査も行いました。

「道内の43大学を対象とした調査(回答率は46.5%)では学生の2人に1人が機構の奨学金を利用しており、支給額は月額3万~12万のうち5万円が最多であること、国公立よりも私立の方が利用者が多いことなどがわかりました。自宅生が借り入れた高額の奨学金が家庭の生活費に充当されているケースもあった。8年たったいまも、傾向は変わっていません。北海道は自宅外の学生が多く、生活費にお金がかかるため、奨学金の借入額も高くなりがちです。道民の所得水準は全国に比べて低いこともあり、家計の負担感も高くなる。国立大学の学費は大都市部の高額所得者には『それなり』でも、道内の一般家庭には『割高』です。私立大や専門学校は、国立の基準に引きずられて高くなっている部分もあります」

 ――国は20年度から高等教育の無償化を本格化しました。入学金や授業料を減免する所得制限の緩和や給付型奨学金の拡充が柱ですが、評価は。

 「負担軽減がある程度進んだ点は否定しませんが、いい制度になったかどうかは疑わしい。授業料免除と給付型奨学金が修学支援新制度にまとめられたために、これまで授業料を免除されていた学生は余計に苦しくなりました」

 「奨学金の減免基準に使う所…

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