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妊産婦向けに開発販売された「VITA GELATO マタニティ」。3種のフレーバーで、つわり中でもおいしく食べられる=石田真澄さん提供
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 つわりや赤ちゃんの世話と向き合う女性に、癒やしと栄養を――。山形県天童市のジェラート専門店「COZAB(コザブ) GELATO(ジェラート)」が、そんな思いを込めたジェラートをつくり、販売している。

 考案したのは、お店を運営する寒河江商店(山形市)の石田真澄代表。妊娠中、つわりで食事がつらかったときも、冷たくさっぱりした味のジェラートは食べられた。妊婦のお客さんから「ジェラートが心身ともに支えになった」と言われたこともある。おいしくて、栄養面でも産前産後の女性をサポートできる商品の開発にとりかかった。

 石田さんは元看護師で、製薬業界で新薬の開発に携わった経験もある。妊産婦に不足する栄養素を、国や学会の研究データで調べた。鉄や葉酸など七つの栄養素について1日の食事で不足する量を計算し、1カップのジェラートで補えるように。子どもとも一緒に食べやすいよう、3歳児が1カップを食べても問題ない含有量にした。

 苦労したのは風味だ。栄養素を取り入れるために使う原料には、においや味が気になるものもあった。青魚からとれるDHAは魚臭いため海藻由来に変えたり、鉄分の風味を他の味とかけあわせてやわらげたり。試行錯誤を重ねた。

 監修は、学生時代の恩師である山形大学医学部の藤田愛教授と、同級生で同学部の松田友美教授に依頼した。素材の選定や栄養素の配分量などにアドバイスを受けた。

 フレーバーは、シトラス、ダブルベリー、トロピカルフルーツの3種類。試食会を開き、酸味を増やすなど細かい希望も採り入れた。

 商品名は「VITA(ヴィタ) GELATO(ジェラート) マタニティ」。VITAは、イタリア語で人生を表す。パッケージカラーは、明るく気持ちを上げられるような色を選んだ。

 つわりには個人差があるが、「車酔いや船酔いが長期間続く」ともたとえられる。産後は、新生児の世話に追われ、自身をいたわることは後回しになりがちだ。

 発売後、当事者からは「求めていた味」「商品があること自体が励みになる」との声が寄せられた。今後は、産後向けにリッチな風味の商品や、食が細くなる高齢者向けなど、ライフステージに寄り添う商品の開発もめざしたいという。

 石田さんは「ひとりでも多くの妊産婦やまわりの方々に知っていただけたら。助けにまでならなくても、心と体の支えになり、赤ちゃんとの楽しい時間につながっていくとうれしい」と話している。

 店頭では1個(税込み500円)から販売、オンラインショップではセット販売のみ取り扱っている。

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