7月1日限定・金沢の「氷室饅頭」の販売準備をする畑主税さん=玉川高島屋(東京都世田谷区)

現場へ! あんこを守れⅡ④

 氷室の節句の7月1日、百貨店の玉川高島屋(東京都世田谷区)でのこと。金沢から新幹線で運んできたばかりの「氷室饅頭(まんじゅう)」をワゴンに並べて、和菓子のバイヤー畑主税(ちから)さん(44)は解説を始める。

 「白い饅頭はお清め、緑は健康、赤は魔よけ。節句に麦まんじゅうを食べて、無病息災を祈ってきました」「金沢では人口より多い数が、やりとりされる日です」

 たちまち行列ができ、「知ってる」「知らなかった」と会話が生まれる。

 遠い地域の風習と「その日だけ」のお菓子に、大都市の百貨店が重きを置くのは、なぜ。「和菓子の世界では、需要と供給側がかみあっていません」。そう畑さんはいう。

 お中元などの贈答用という時代は昔。消費者が買いたいのは、手土産や自分で楽しむための菓子だ。コロナ禍に花見や月見、お節句など暦の菓子が売れだした話は、あちこちで聞く。季節の暮らしと、そこに寄り添うお菓子が見直されて、人気はいまも続く。

 一方、業界はどこも人手不足で、手間と採算がはかりにかけられる。賞味期限も短い生菓子は減る傾向にあった。

 畑さんの手がける企画は、逆を行っている。京都や名古屋の有名店の生菓子を定期販売する、次世代の職人たちの実演イベントを開く。好きなお菓子をバラで買えるようにして、間口を広げる。X(旧ツイッター)のフォロワー数5万6千という自身の発信力も手伝ってどれも盛況、人と人の出会う場になっている。

 畑さんは「お菓子屋さんには…

共有
Exit mobile version