長野県松本市教育委員会が入る市役所大手事務所=2025年7月9日、長野県松本市、小山裕一撮影

 長野県松本市教育委員会は、学校側の不適切な対応で、市立中学校の女子生徒(当時1年)が2023年度に不登校になり、自殺を図ったと発表した。いじめ防止対策推進法に基づく「いじめ重大事態」に準じる対応の必要があるとして、第三者の調査委員会で調べていたという。

 市教委が8日に公表した報告書によると、女子生徒には持病や発達特性があり、中学校に進学する前から、在籍していた小学校長や進学先の中学校教頭を交えた支援会議が開催されていた。

 しかし、中学校教頭が会議の内容を共有しなかった。女子生徒について配慮が必要な事項は、担任教諭や養護教諭らに伝わらなかったという。

担任教諭が差別的発言

 女子生徒は中学校に進学後、担任教諭の強い言葉に恐怖心を抱いて登校できない日が多くなったうえ、学校に対して拒否反応を示すようになり、自宅で自殺しようとしたという。

 調査委員会は「生徒を『お前』と呼ぶなど、担任による荒々しい言葉や差別的な発言、高圧的な態度での指導があった」と認定。「子どもを一人の人格のある人間として対等に接しようとする資質に欠けている」と指摘した。

 また、校内で会議の内容が共有されなかったことについても「校内体制の不適切さを象徴しており、看過できるものではない」と批判した。

別のいじめ重大事態も

 また、市教委は別の女子生徒(当時中学1年)が22年度、同級生2人との人間関係が原因で登校できなくなり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたことも発表した。この事態でもいじめ重大事態として調査委員会が設けられた。

 報告書によると、加害生徒は女子生徒に対して、LINEグループ内で一方的に責め立て、誹謗(ひぼう)中傷や脅迫と受け取れるメッセージを継続的に投稿。女子生徒は前髪を切ることを強要されたうえ、顔に落書きをされ、LINEで流されたといい、調査委員会はいじめと認定した。

 この件について、調査委員会は「学校側の初期の組織的対応の遅れがいじめの重篤化を招いた一因」と指摘した。女子生徒の保護者から学校に最初に相談があったのは23年1月だったものの、学校が市教委に報告したのは4カ月後だったという。

 臥雲義尚市長は会見で「当事者となった保護者や生徒には極めてつらい状況を強いた。関係者すべてが反省し、今後はこうしたことがないように、取り組みにつなげていく必要がある」と述べた。

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