アカデミーの歴史を研究する隠岐さや香・東京大教授=2025年6月、東京都文京区

 日本学術会議をめぐる5年間の議論について、科学アカデミー史を研究してきた隠岐さや香・東京大教授は、決定的に抜け落ちた点があると指摘する。学術会議は、国際的にも珍しいという文理融合型のナショナルアカデミー。だからこそ求められる役割とは。

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 ――フランスを中心に、アカデミーと政治権力の向き合い方を研究されてきました。改めてアカデミーの役割を教えてください。

 研究者が、自分たちの意思や問題意識をもとに集まった集団がアカデミーだ。科学者コミュニティーの代表的な意見をまとめ、発信することが存在意義だ。その中で、国を代表する役割を認められ、指定された団体が「ナショナルアカデミー」となる。

 自発性や自治が、権力と向き合う上で要件として欠かせない。ボトムアップで意見を集め、メンバーは科学者自身が選んでいく。民主的なプロセスが肝要だ。

 ――学術会議をめぐる議論では、政府・与党側を批判してきました。

 組織のあり方をめぐる議論の発端が、学術会議や、研究者側が自ら望んだものではなく、権威主義国家のように、政治や行政が一方的に介入したからだ。

 日本に限らず、2010年代以降、各国で、アカデミーへの圧力が強まっている。

 トルコでは、会員間による推…

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