◆夢洲から
大阪・関西万博の会場で講演できることを楽しみにしていた人が一人。小型ロケットを開発する企業「AstroX(アストロエックス)」最高経営責任者の小田翔武さん(33)だ。
東日本大震災からの復興がテーマの講演会で登壇し、「宇宙は近いところにある」と力強く語った。
3年前に人工衛星の軌道投入をめざして起業し、福島県南相馬市に本社を置いた。市の後押しを受けながら、昨年に2度、津波が襲った土地から打ち上げ実験をした。
ロケットを見上げた地元の人から「震災で下を向いていたが、全員が上を向く日が来るなんて」と言われたことが「胸に残っている」と語った。
2人で立ち上げたAstroXは社員が約20人に増え、1年後にはもうロケットを宇宙へ到達させる計画を立てている。
これまでの2度の打ち上げ実験を現場で取材した私は、ロケットを見上げる人たちの表情が「未来への期待」にあふれているのを見た。
万博の会場では、同じ表情をしている人がたくさん。小田さんの講演を聞く人、展示されている新しい技術に触れる人。そうした多くの期待が、挑戦する人たちの前に進む力になると思えた。
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世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。