観光客は多いけれど滞在時間は短い――。京都府宇治市が抱える観光の課題を解決しようと、小学生が企画案を考えた。発表会では「学校をホテルにする」「牛車(ぎっしゃ)を体験させる」といった斬新な提案が飛び出した。
市立西小倉小学校(伊勢田町)で2月20日、企画案の発表があった。6年生の55人が12グループに分かれ、市観光振興課の2人の職員にスライドを使ってプレゼンした。
「西小倉小の校舎を使って、観光客が泊まりたいと思うような宿泊施設をつくることを提案します」。2組4班の4人が前に立った。
宇治の小学校によくある〝お茶が出る蛇口〟はそのまま活用する。加えて、お茶を使った「茶風呂」が体験できるようにプールを改装。教室を区切って二つの部屋に分け、洋室と和室を設ける。改修工事の費用は、「もともとの設備を最大限生かした場合は8千万円以下でできたケースもある」と紹介した。
西小倉小は、来年4月に開校予定の小中一貫校(愛称・宇治西小倉学園)に統合され、廃校になる。班長の上田佳菜子さんは「使われなくなる校舎を活用すれば、お金もかからない」と話した。
2組5班の5人は「牛車体験」を提案した。平安時代の衣装を身にまとって牛が引く車に乗り、平安貴族の気分を体験するというもの。
京阪宇治駅近くにある、お茶と宇治のまち交流館「茶づな」の周辺に長短2本のルートを設定。観光地の人力車を参考に、料金は長いルートで大人1万円、子ども7千円とした。牛の維持費は年間1100万円を見込む。観光客の滞在時間が延びて消費額が増えれば、「(市の収入が増えて)学校の給食にアイスクリームやケーキが出ます」。
市観光振興課の大原豪さんは「とても面白い発想。実現すれば恐らく日本で初めてでしょう。課内でも共有します」とコメントした。
ほかにも、平安の衣装を着て源氏物語を書き写す▽茶摘みをしつつお茶を楽しむ▽夜限定のスイーツ提供とお店や街のライトアップ――といったユニークな企画案が出された。
西小倉小の6年生は「宇治学」(総合的な学習の時間)で、街の歴史や文化について学習した。観光などで年間500万人近い人が訪れる一方、平均の滞在時間は3時間半(2022年度調査)と短いことに気がついた。課題の解決に向け、街頭で観光客にインタビューするなどして企画案を練った。