「憲法季評」安藤馨・一橋大学教授(法哲学)
参議院選挙が終わって数週間が経った。投票率が久々の高水準であったことは政治参加の点で評価に値しよう。衆参両院での自公少数与党化と強力な野党の不在という結果は多党制時代の到来を告げているが、やはり参政党の躍進が目を引く。とりわけ就職氷河期世代を構成する40~50代の支持が厚かったことは注目すべき点である。
今回同じく躍進した国民民主党や他野党と比べて、参政党を特徴づけていた選挙戦略のひとつが「日本人ファースト」という印象的なうたい文句を掲げての運動である。前回の本欄でも触れた通り、政治共同体はその構成員に外部者よりも優先的に配慮するべきである、という意味においてであれば、そのような優先性は福祉国家の基盤でもあり、なんら奇異な主張というわけではないだろう(それを否定する方がむしろ政治的には「非常識」に属しよう)。福祉国家の弱体化に対する本能的危機感によって人々がこのうたい文句に引きつけられたという面もあるだろう。だが、このうたい文句がそれにも増して訴えかけていたのは、外国人が日本人より優遇されており、日本人の持たない特権を享受しているのだ、といった類の、必ずしも事実に基づかない怒りの感覚である。
たとえば、生活保護受給者に…