朝霧が晴れ、山あいの茶畑に日が差す。稜線(りょうせん)を背景に連なる茶畑は緑のパッチワークのようだ。静岡市の中心市街地から車で1時間弱、800年の歴史を誇り徳川家康も愛飲した「本山(ほんやま)茶」の産地・玉川地区に、佐藤誠洋(まさひろ)さん(35)の営む茶園「志田島(したじま)園」はある。
父・丈典(たけのり)さん(71)を継いで、まもなく13年。茶価の低下や肥料の高騰など、業界を巡る環境は厳しい。だが、佐藤さんは「茶畑という空間とか、茶農家であることの価値に、みんなが気づき出した」と変化を感じている。
安倍川水系西河内川に流れ込む沢のほとり。父と2人で約2ヘクタールに自家配合の肥料で茶葉を育て、自宅工場でお茶を製造する。清流でワサビも栽培する。そんな茶作りの日々やお茶のいれ方をイベントやSNSなどで伝えるうち消費者に直接売る機会が増え、今は一番茶の約4割は直販だ。「普通に問屋に卸して普通に食っていける時代ではない」。そう考えて切り替えた。
■イベント出店やSNS、ファ…