鼻を出した状態でマスクを着用して対局に臨み、反則負けとなった日浦市郎八段=2023年2月1日、東京都渋谷区、村瀬信也撮影

 将棋の対局中、マスクを適切に着けなかったことで反則負けとなり、3カ月間の対局停止処分を受けたのは不当として、日浦市郎八段(58)が日本将棋連盟に損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁(杜下(もりした)弘記裁判長)は18日、請求を退ける判決を言い渡した。

 日浦八段は2023年1~2月に計3回、鼻を出した状態でマスクを着けて対局に臨み、鼻を覆うよう立会人に促されても従わなかった。連盟は、新型コロナウイルスの流行を受け、対局中のマスク着用を求めた臨時規定に違反したと判断。日浦八段をいずれも反則負けとし、3カ月間の対局停止処分とした。

 判決は、連盟が政府の当時の推奨に沿って、マスクで鼻まで覆うよう求めたのは不合理ではないと指摘。対局中に複数回、注意もしていたことから処分は「不意打ち」といえず、連盟の裁量の範囲内だと結論づけた。

 判決に対し、連盟は「本件に関するコメントは出しません」としている。

 日浦氏側は裁判で「鼻まで覆うと集中力が下がる」とし、連盟の規定はマスクの具体的な着用方法を定めていないと指摘。反則負けや対局停止処分にする根拠がないとし、処分は違法だと訴えていた。

 臨時規定は22年2月に導入され、政府がマスク着用に関する方針を緩和したため、23年3月に廃止されている。(米田優人)

共有
Exit mobile version