コロナ禍の日常にひそむものは――。小山田浩子さんの新刊「最近」(新潮社)はパンデミックに揺らいだ日々を見つめる7編の連作短編集だ。
緊急事態宣言から、今の暮らしへ。この数年、その時々の「当たり前」がめまぐるしく移り変わった。家から出られず、盆暮れに帰省することもはばかられた。マスクなしの暮らしや海外旅行が想像できない時もあった。
「常識がどんどん変わり、行動が変容していった。このぬるっと動いている感じは書いておかないと忘れてしまう」。小山田さんはそんな思いに突き動かされたという。
夫が救急車で運ばれた病院の待合室で、「赤い猫」を見ると死ぬといううわさを思い出す妻。妻の弟は3度目のワクチン接種をするが、母親が副反応を相変わらず心配している。かと思えば、在宅看護を受けている妻の大伯母「おおばあちゃん」の容体が悪く、夫婦で見舞いにいく。
コロナ禍のなか、小山田さん…