岸田文雄首相に米バイデン大統領。この夏、日米政府のリーダーが相次いで自ら退くことを決めた。引き際を決めることは、どのような組織のリーダーでも難しい。経営コンサルタントとして数々の経営者と接してきた秋山進さん(61)に、あるべき引き際を聞いた。

 ――経営者が退くべきかどうかを、どのような指標で判断すればいいのでしょうか

 私は体力、気力、知力の観点から、経営者は進退を判断するべきだと考えています。

 まず体力については、当たり前ですが健康であることが最善です。健康不安を抱えている状況では、本人が判断ミスをしやすくなるのもさることながら、頼れる状況ではないと感じた周囲がほかの取締役に判断を仰ぐなど指示系統に混乱を招きます。だから、健康不安を周囲に感じさせたところですでに組織にとってはリスクなのです。

 階段の上り下りに苦労する姿がテレビに映されるなど、体力面で不安を感じさせたバイデン氏が大統領を続けることは、国家にとってはリスクだったと言えるでしょう。

 ――気力については

 自身が成すべきことの展望をしっかり描き、実行しようという「使命感」を抱いている状態が最善です。一方で自身が最低限果たすべき役割を全うしようという「責任感」だけがある状態でも職務はまだ続けられるでしょう。気力が消滅してしまったら引き際であるのは言うまでもないでしょう。

 ただやっかいなのは、一見気力はあるように見えて、それが自己をよく見せるための虚栄心だけである場合もあります。これは長くトップにいる経営者が陥りやすいものです。自身の功績を大きく見せるために、自分の指揮下で立てた経営計画の数字を達成することにこだわる経営者がいます。こうした虚栄心に周囲が忖度(そんたく)して、無理に数字をつくるために不正を働いたり無謀なコストカットをしたりということが起きます。

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 ――岸田氏にとって今は引き際だったのでしょうか

 体力は問題なさそうです。た…

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