衆院島根1区補選の応援に駆けつけ、集まった有権者に手を振る岸田文雄首相=2024年4月27日午後4時26分、松江市、上田潤撮影
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 自民党政治を30年近く取材してきたが、いま目の前に広がるのは、かつて見たことのない光景だ。政局や政策の行方を決めてきた政治の力学が失われ、それに代わる動きもないまま漂っている。政治家の言葉の軽さは目を覆うばかりで、有権者とのつながりも切れつつある。

 4月末、首相官邸で記者団を前にした岸田文雄首相の「敗戦の弁」は、島根と鳥取の言い間違えから始まった。4月の衆院3補選で自民党の全敗が決まった翌々日のことだ。

 「真摯(しんし)に重く受け止めております。まず鳥取、ああ失礼、今回の補欠選挙の……」

 ささいなことを、と思うかもしれない。だが岸田氏は選挙中に2回島根に入り、多くの有権者と向き合ってきた。それが開口一番、「鳥取」とは、あなたはどこで選挙をしてきたの?と尋ねたくもなる。逆転を信じてきた支援者のことを思えば、間違っても「鳥取」という言葉が出ることは考えられない。

 この軽さ、ちょっと不思議な感じもする。いったい、何が起きているのだろう。

 たしかに、島根と鳥取は勘違…

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