多くの人でにぎわう小倉の繁華街。工藤会組員が歩く姿を見ることはなくなった=2024年9月5日午後10時22分、北九州市小倉北区鍛冶町

 全国唯一の特定危険指定暴力団・工藤会(本拠・北九州市)トップらの逮捕に踏みきった福岡県警の「頂上作戦」から、11日で10年を迎えた。総裁の野村悟被告(77)は一審で死刑、二審で無期懲役の判決を受け上告中。その間に、ゼネコンや飲食店などから上納されていた「みかじめ料」などの資金源が断たれ、組織は急激に縮小している。

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 県警によると、工藤会の組員(準構成員らを含む)は、2008年の1210人がピークで、頂上作戦直後の14年末には790人まで減った。その後も離脱が相次ぎ、昨年末時点でピーク時の8割減となる240人で、過去最少になった。

 高齢化が進み、若年層が細る。組員の平均年齢は、14年末は45・9歳だったが、昨年末には54・7歳。年代別では20代以下0・6%▽30代8・6%▽40代25・2%▽50代37・4%▽60代11・7%▽70代以上16・6%となった。

 県警は、離脱の意向がある組員らに働きかけ、就労支援を進めてきた。県警が離脱を支援した工藤会系組員は14~23年で計302人。頂上作戦前の13年は5人にとどまっていたが、作戦直後の15年は49人に急増し、昨年は17人に上った。元組員を雇う意思がある県内の協賛企業も、23年末時点で377社に上る。

 県警幹部は「弱体化することで組員はより一層抜けやすくなるが、辞めても仕事がなければまた暴力団に戻ってしまう」とし、「就労支援は究極の暴排」と語る。

 工藤会が本拠を置く北九州市でも独自の就労支援を進める。22年度から始まった「社会復帰対策推進事業」では、元組員を雇用した企業に対し、業務に必要な運転免許取得費用などを助成している。実際に助成したのは22年度の1件だけだが、問い合わせは多いという。

暴力団への憧れ防げ 中学・高校で「暴排教室」

 同市安全・安心推進課の担当者は「工藤会を再び台頭させないためにも元組員の社会復帰の受け皿を作っていかないといけない」と話す。

 さらに県警は若者の暴力団加入を防ごうと11年から、全国でも珍しい「暴力団排除教室」を続けている。中学や高校、少年院で「暴排先生」と呼ばれる県警職員らが、SNSや映画などで暴力団に憧れをもたないよう、恐ろしさを伝えている。

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