年金生活では、家計の管理が何よりも大切です。きちんと収入と支出の状況を把握しておかないと、たまにはぜいたくができるのか、節約に励まないといけないのか、わかりにくい。銀行口座を定期的にチェックしていますか? 暮らしにかかわる銀行との付き合い方について、ファイナンシャルプランナーで「高齢期のお金を考える会」代表の畠中雅子さんに聞きました。
優遇も珍しくない
年金と名がつくものは、公的年金、企業年金、個人年金保険、財形年金貯蓄、イデコ(iDeCo、個人型確定拠出年金)など、さまざまな種類があります。複数を受け取る人も少なくないでしょう。入金される口座は、ひとつにまとめたい。残高や出入金の状況によって、ATMの時間外利用や他行宛て振り込みの手数料などを優遇してくれる銀行も珍しくないはずです。
日常生活で使うお金を出し入れする口座は「使う口座」とも呼ばれます。入るお金は各種の年金。出るのは、お財布にしまう現金のほかに、公共料金やクレジットカードの引き落としなど。クレジットカードを複数持っている場合も、この口座にまとめます。
現役時代は、もらった給料の範囲内で次の給料日まで過ごせばいいから、わかりやすかった。年金になると、たとえば公的年金の支給は原則として偶数月の15日。2カ月に1回ですし、ほかの年金とは違う日かもしれません。一方で、引き落としは毎月ありそう。やりくりが根本から変わって難しくなるのがわかるでしょう。
「使う口座」は、いま持っている口座でもかまいません。新たに開くなら、まずはメガバンクとネット銀行に分けて考えてみましょう。メガバンクの特徴は、支店が各地にあること。自宅に近いなど、便利な場所にあるかどうかで選ぶのもいいですね。住所、電話番号、届け出印の変更や通帳の再発行といった場合にも、窓口で行員に聞きながら手続きできます。
ネット銀行はメガバンクと比べると、預金金利の上乗せをはじめ優遇が充実している傾向があると言えます。ほとんど店舗はありませんが、だいたいはコンビニやショッピングセンターなどに置かれたATMを月に数回、無料で使えると考えてもいいでしょう。ただ問い合わせは電話やネット経由に限られるケースが多いので、日々の取引から手続きまで、操作に慣れる必要があります。
「使う口座」がひとつだったら、毎月の手取り収入はどれくらいで、生活費はいくら出ていくのか、お金の流れが徐々につかめるようになります。1年ぐらいかければ、かなり明確に把握できるでしょう。そうなれば、最低限必要な残高がわかります。余裕がある場合には、そのまま放置しておくのは、もったいないかもしれません。
有効活用するなら、余裕分のお金は「ためる口座」に移します。「使う口座」は普通預金ですが、こちらは定期預金が候補になるでしょう。最初に預け入れる期間を決めます。1年、3年、5年、10年……など、いろいろあります。満期がくるまで基本的には引き出せない制約がある半面、金利は普通預金よりも高い。
あるメガバンクの例で説明しましょう。普通預金の標準金利は年0.2%。1万円を1年間預けると20円の利息がつく計算です。定期預金では300万~1千万円未満の場合、1年なら0.275%、3年で0.35%、5年で0.4%と、期間が延びるほど高くなります。
途中で解約すると、金利が下がるのが一般的です。約束した金利の7割になるなどですね。預け方にもテクニックがあります。いくつかに分けて、それぞれ期間も変えるのも、ひとつの手でしょう。「3年後に自宅をリフォームする」と決まっていれば、たとえば退職金2千万円のうち500万円を3年で預ける。残りは三つに分けて5年、10年、15年に。子供の結婚や孫の教育の援助といった、将来の計画に沿った期間を選びたいところです。
相続、認知症に向けた準備も
「使う口座」と「ためる口座…