幼児教育の拡充が、少年の暴力犯罪率や10代の妊娠率の低下につながっていたことが、東京大の山口慎太郎教授(労働経済学)らの研究で分かった。国による幼児教育への財政支出は、社会にとってどのような意義があるのかという視点で取り組んだもので、「幼児教育の社会への長期的な影響を明らかにした点で意義がある」とする。

 研究結果を発表したのは山口教授と立教大の安藤道人教授、専修大の森啓明准教授によるチーム。4月に発表され、国際学術誌に掲載された。

 幼児教育の拡充をめぐっては、国が1963年に幼稚園教育振興計画を策定。7年計画で人口1万人の市町村に1幼稚園を設けることを目指した。幼稚園が増え、多くの地域で幼稚園の在園率は上昇したが、地域差もあった。

 山口教授らは幼稚園の在園率が大幅に上昇した地域と、変化が小さかった地域を比較し、幼児教育の長期的な影響を分析。在園率の上昇幅について都道府県(本土復帰前の沖縄を除く)別で上位と下位グループに分けた上で、幼児教育の拡充の影響が出始める70年代以降の14~19歳の人口1千人あたりの少年の暴力犯罪の検挙件数と、15~19歳の女性1千人あたりの中絶と出産件数(妊娠数)の推移を見た。

 少年犯罪については、在園率…

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