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2025年7月、オーストラリアでの米豪主催多国籍演習「タリスマン・セイバー」で、米陸軍第3マルチドメインタスクフォースが米国外で初めて中距離ミサイル発射システム「タイフォン」からミサイルを発射し、海上目標を沈めることに成功した=米陸軍のホームページから
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 陸上自衛隊と米海兵隊との日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」が9月11日から25日まで沖縄や九州などで行われています。今年は米陸軍の中距離ミサイル発射システム「タイフォン」の展開訓練を国内で初めて行います。沖縄の米海兵沿岸連隊(MLR)は7月から地対艦ミサイル「ネメシス」を使った訓練を始めました。防衛研究所の菊地茂雄政策研究部長は「タイフォンやネメシスの動きが徐々に台湾に近づいている」と指摘します。

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「切り札」、ネメシスとタイフォンとは

 ――タイフォンとネメシスはどのような装備なのですか。

 タイフォンは、宇宙、サイバー空間、電磁波領域を含むすべてのドメイン(領域)での作戦を可能にするよう、米陸軍が2028年度までに五つ編成する予定の部隊「マルチドメイン・タスクフォース」(MDTF)の中核装備の一つです。

 トレーラーで牽引(けんいん)するコンテナにイージス艦に装備される垂直発射機を搭載し、SM6艦対空・対艦ミサイルや対地・対艦攻撃用のトマホーク巡航ミサイルが発射できます。射程は、SM6が500キロ弱、トマホークが1600キロ程度といわれています。C17輸送機でも展開可能で、迅速に長距離打撃能力を展開できます。

 一方、ネメシスは、装輪車両を無人化し、射程185キロ以上といわれる高性能対艦ミサイル「海軍打撃ミサイル(NSM)」を搭載します。敵からの攻撃を受ける範囲に踏みとどまって作戦を行う「スタンドイン部隊」構想を実現するため、海兵隊が新たに編成したMLRを支える主要装備です。

 海兵隊はネメシスと同じように無人化車両に対地・対艦攻撃用のトマホーク巡航ミサイルを搭載したものについても、装備化を進めています。陸軍も海兵隊にならって無人化車両にミサイルを搭載することを検討しているようです。

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 ――タイフォンやネメシスは…

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