(21日、第107回全国高校野球選手権北北海道大会十勝地区1回戦 芽室14―4本別 6回コールド)
「みんなとまだまだ野球をやるんだ」
六回裏2死一、三塁、本別はあと1点を失うとコールド負けのピンチだ。マウンドの石川凛太郎主将(3年)が、「うりゃ―」と声を張り上げながら、投げた3球目。打球は中前に抜けた。
「あそこで抑えていれば、もう少しみんなと野球ができたのに……」
石川主将にとって、単独チームで出場した最初で最後の夏が終わった。
本別は2020年夏を最後に、部員不足のため、他校との連合チームで出場してきた。今春、1年生3人が入部。さらに野球経験がある1年生3人に助っ人を頼み、春から5年ぶりの単独出場が実現した。
1年生の時は単独出場など考えもできなかったという石川主将。1年冬が特につらかったが、「2、3年生になったら試合で勝ってやる」との思いを支えに乗り越えた。それだけに「単独で出られて本当にうれしかった」。
春は1回戦で敗退。夏こそ1勝を。強い気持ちで臨んだこの試合、本別は一回、先頭打者石丸大吾選手(2年)の三塁打を皮切りに3点を奪った。しかし、三、五回に大量失点。試合の流れを奪われた。
「自分の声でチームをひっぱり、流れを呼び込み、勝つ」。石川主将はピンチで遊撃手の守備位置から、「ここで締めるぞ」と、声を張り上げ続けた。
六回裏、救援でマウンドに立った。捕手は弟の石川心之介選手(1年)。弟のミットに投げるのは公式戦では初めてだ。「思いっきり投げろ」と心之介選手。頼もしさを感じた。
「高校野球を通して、つらいことも楽しいこともあったけど、やりきることはできた。後輩たちは来年、帯広の森に校歌を流してほしい」。思いを託した。