石破茂首相は、戦後80年の節目となる今月15日の終戦の日や、日本が降伏文書に調印した9月2日に、歴史検証を踏まえた首相個人としてのメッセージを文書で出すことを見送る方向で調整に入った。背景には、7月の参院選大敗で自民党内で首相退陣論が噴出するなど、首相の直面する厳しい党内情勢がある。
複数の政権幹部が明らかにした。
- 主導権失う少数与党 党内で「石破おろし」直面のまま臨時国会が開会
安全保障問題に長年取り組む首相は元々、日本の軍部が暴走した戦前戦中の歴史にも、なぜ政治が軍を統制する「文民統制」が機能しなかったのかという問題に強い関心をもっていた。昨秋に首相に就任すると、周囲には、戦後80年の2025年について「戦争を知っている人が残っている最後の節目」と重要性を強調。「なぜあの戦争に突き進んだのかという問題がきちんと議論されていない」とし、先の大戦に至った経緯の検証に強いこだわりを見せた。
自民党内の保守派が反発 基盤脆弱な首相も配慮
しかし、自民内の保守派は安倍談話以降の新たな談話は不要との立場を取っていた。とくに「リベラル寄り」とみられる首相が新たな戦後談話を出せば、安倍談話が否定されかねないと強い懸念を抱いた。党内基盤の脆弱(ぜいじゃく)な首相は政権発足当初から、こうした党内保守派の意向に配慮。首相は3月、保守派の反発にも配慮して閣議決定を伴う「戦後80年談話」は出さない方針を固めた。
代わりに首相が検討を進めた…