鳥取県倉吉市の工業団地の一角に周囲とは異質なグレーの建物がある。「アート格納庫M」。入ると、廃油と水で満たされた小さなプールのような金属の水槽が迎えてくれる。現代アート作家、原口典之さん(1949~2020)の作品「Oil and Water」だ。かがんで見つめていると吸い込まれそうな深みを感じる。
第2展示室の扉をあけると、高さ6.5メートルのH鋼を直立させた同じく原口さんの作品「Untitled FCS」がある。薄暗い空間でモノそのものの存在感に圧倒される。まるで出撃のないまま忘れられた秘密基地に入り込んだような。
こんな不思議な美術館を作ったのなら、岡野稔館長(79)はよほど美術に関わりが深いのだろうと思ったが、「全然ないです」と笑う。
割り箸などを販売する会社丸十(倉吉市)の3代目。美術館通いが好きだったが、美術を学んだことも創作したこともない。
きっかけはコロナだった。取…