美術史を書き換えるべきかどうか。スウェーデンの女性画家ヒルマ・アフ・クリント(1862~1944)の、アジア初となる大回顧展が突きつける問いだ。この10年ほどで再評価が進み、カンディンスキーらに先駆け、抽象絵画を創案したとされるからだ。
今展のクライマックスは、展示中盤に登場する「10の最大物」と名付けられた07年の10点組の展示だ。薄暗いなか、縦約3・2メートル×横約2・4メートルの大画面が並ぶ。淡い色調の画面に円形やらせん形が伸びやかに描かれ、包み込まれる体験が生まれる。
抽象絵画は、10年ごろにカンディンスキーが発表したのが始まりとされるので、先駆けているのはもちろん、マーク・ロスコら戦後米国の大画面の抽象表現主義を先取りしているという指摘もうなずける。
なぜ、このような表現に到達…