組み立て中の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」と。「ねじ締め一つとってもマスターするのに7年かかる」=神奈川県鎌倉市、工藤隆太郎撮影

凄腕しごとにん 奥脇幸一さん(58)

三菱電機 宇宙製造部 主席技員

 爆音をとどろかせながら、人工衛星を載せたロケットが宇宙に打ち上げられる。その圧巻の光景を地上から目の当たりにしても、歓喜に浸れたことがない。ほっと一息つけるのはそこから約1週間後、担当した衛星が軌道上で太陽光パネルを広げ、異常がないことを確認できた時だ。

 「不具合は許されない。宇宙まで修理しには行けませんからね」

 組み立てに携わってきた人工衛星などの宇宙機は、25年間で48機に上る。国内メーカーの職人では随一の数だ。日々の天気予報を支える気象衛星「ひまわり」、災害時の状況把握に欠かせない地球観測衛星「だいち」など、今も16機が運用されている。

 人工衛星の組み立ては、今も昔も手作業がメインだ。小さなねじまで含めば、部品は100万点近くある。それを細長いドライバーやレンチで取り付けていく。地球との交信に用いるアンテナの取り付け角度は、100分の1ミリでもズレがあればやり直し。人さし指と親指の爪でボルトをつまみ、わずかな感覚の違いを頼りに、位置を調整する。こんな途方もない作業が約2年も続く。でも、それが面白い。

畑違いの部署異動

 子どもの頃から手先が器用だ…

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