2022年2月24日。ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まった。「戦争はすぐ終わる」。そう信じてやまなかった。
2024年11月18日。侵攻は続き、999日目。オクサナ・コスチン(33)は左手で7歳の娘の手を、右手でスーツケースをひき、ロシアの同盟国、ベラルーシとの国境沿いにあるウクライナ北西部ドマノベに着いた。
ウクライナの国旗が、「ヨーロッパ」と名のつく商店が、笑顔で歓迎する支援員らが目に入る。
黒海に面したウクライナ南部ヘルソン州の港町から、8日間の旅路。同じ国なのに、ロシアとベラルーシを経由しなければならなかった。
「いまどういう感情か、自分でもわからない」と言った。紅茶の入った紙コップを包む両手が震えている。つかの間の安心は、戦争が続いているという圧倒的な現実にかき消される。
侵攻後にロシア軍が制圧した州都ヘルソン出身の教師。戦争が始まると、「少しでも安全な所に」と60キロ南の港町に移った。ヘルソンは22年11月に解放されたが、港町はロシア軍に占領されたままだった。
「きっとそろそろ」。そう信じ続けるのも、もう限界。「人生には限りがある」。戦争でそれを学んだ。「明日死ぬかもしれない。もう、時間を無駄にはできない」
ただ、ロシア側とウクライナ…