長男が通う小学校のPTA会長を務めた専修大教授の岡田憲治さん

 専修大教授(政治学)の岡田憲治さんは2018年度から3年間、長男が通う東京都内の小学校のPTA会長を務め、経験を著書「政治学者、PTA会長になる」(毎日新聞出版)にまとめました。負担の大きい活動、変化を拒む組織……。敬遠されがちなPTAとどう向き合ったのかを聞きました。

【特集】変わる!PTA

PTAを変えたい! 「強制加入」や「役員の輪番制」など、半ば強制的な運営が話題になり、あり方を見直す例が各地で出てきています。誰のための、何のための組織なのか。模索する動きを紹介します。

「流れを変えて」と頼まれ

 ――PTA会長を引き受けたのはなぜですか。

 息子が入った地元のサッカークラブで、ママ友に頼まれたんです。「いまのPTAは理不尽な活動が多い。流れを変えてほしい」と。彼女は次期役員の「選考委員」でした。

 ――それまで、PTAとの関わりは。

 役員はありません。イベントを手伝うことはありました。そのなかで、ママ友が言う「理不尽さ」を感じることはありました。

 イベント後の打ち上げに、リーダーだったお母さんが来られなかったんです。理由を聞いたら「役員との反省会があるから」。そのお母さんは役員ではなかったけど、「毎回やっているみたいで……」と反省会に行きました。

 日本社会のあるあるですよね。意義を大して感じていないのに、我慢して同じことを繰り返す。大きなトラブルがなかったなら、申し送りはメールでいいじゃないですか。

 ――そんな組織を変えようと思ったのですか。

 いえ、一度は断りました。研究で忙しかったので。だけど、選考委員のママ友から説得されました。「その場にいて話すだけでいいから」とたたみかけられて、「やるか」と引き受けました。

「選考委員会」でつまずく

 ――政治学を専門としてきた立場からPTAはどう映りましたか。

 40年近く研究を続け、「自治」とはどういうものか、その蓄積をしてきました。でもPTAでは、最初からつまずきました。

 選考委員会が役員会から独立しているのは、権力を分散させる自治の基本です。しかし、私を会長候補として指名すると、「相談なく勝手に決めた」と指摘が入ったそうです。役員にとってみれば、選考委員会の独立は重要ではありません。そんなことで現実は動かないわけです。

 ――会長になってからも驚いたことがあったそうですね。

 前任者からの引き継ぎです。大量の項目があり、思わず「何時間かかりますか」と聞いたら、「5時間は必要です」と言われました。

 内容は必要性が低そうなものが多かったですが、歴代会長が「お役目ですから」と引き継いでいました。

 だから言ったんですよ。「その都度考えればいいじゃないですか」と。そうしたら、「それだと不安じゃないですか」と返ってきたんです。

「不安」の正体

 ――不安、ですか。

 話を聞くと、前任者たちもP…

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