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サッポロクジラの骨格。茶色が化石として発見された部分。発表論文Tanaka et al (2025)より引用
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 札幌市南区小金湯で発見されたクジラの化石が、新属新種のセミクジラの一種だとわかった。札幌市博物館活動センターなどによる研究論文が今月、海外の学術誌「Palaeontologia Electronica」に掲載された。

 26日に記者会見した同センターの田中嘉寛学芸員は「世界水準の研究成果だ」と語った。

 化石は2008年10月に発見された。豊平川の河原を散歩していた男性医師が「奇妙な形の岩」のようなものを「動物の化石だ」と直感し、センターに持ち込んだのが始まりだ。

 大量の骨が地中に埋まっており、4年がかりで発掘。大勢の市民、研究者らにより、岩から骨だけをきれいに取り出す「クリーニング」や、他の化石との比較や火山灰の分析などの研究が、10年以上続けられてきた。

 化石は900万年前のもので、肩甲骨や指の骨など、全身の約7割が「世界で最も良い状態」(田中学芸員)で保存されていた。全長は12.7メートルほどと推定され、初期のセミクジラ類(全長5メートル程度)と比べて2倍以上大きかった。

 また、現代のセミクジラ類は太い体つきで腕が短いが、細身で腕も細長かった。この違いから、セミクジラ類が進化の過程で泳ぎ方を変えてきた可能性が示唆されるという。

 セミクジラ科の歴史は2000万年あるが、今まで約1600万年前~600万年前の期間の化石は見つかっていなかった。研究チームは「進化の過程を解明する上で重要な手がかりになる」と評価している。

 学名は、「札幌の大きなセミクジラ」を意味する「メガベリーナ・サッポロエンシス」(和名:サッポロクジラ)と命名された。

 化石の一部やレプリカの頭骨は30日まで、同センターの企画展で展示中。その後、9月12日からは北海道大学総合博物館を巡回する。

 田中学芸員は、「札幌は昔は海だった。展示を間近で見ることで、『昔の札幌にはこんな巨大な生物が泳いでいた』ことを想像し、日常とは違う視点を楽しんで欲しい」

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