花火で境内が明るく照らされる鹿島の七日火=群馬県高崎市、佐藤隆夫さん提供

 群馬県高崎市と嬬恋村が策定した文化財保存活用地域計画が国から認定された。文化財に関する自治体のマスタープランにあたり、県内では初めて。高崎市は、上野三碑や国分寺など古代から連なる歴史資産を八つのテーマ(ストーリー)に分類。嬬恋村は浅間山噴火災害の痕跡と、キャベツ畑の広がるパノラマ景観を核としている。(角津栄一)

 群馬県高崎市は、地域計画策定に向けて、市内の町内会に地域に伝わる祭りや地域行事、遺跡など歴史資産についてアンケートした。回答が寄せられたのは約570件に上った。このうち未指定文化財について、市は文献調査や関係者からの聞き取りなどを始めている。

 市が調査をしている一つが「鹿島の七日火」。根小屋町の鹿島宮に伝承される民俗行事で、万灯(まんどう)に仕掛けた花火を点火させる。暗闇のなか、高さ5メートル以上の万灯4台から滝のように火花が降り注ぐ。その様子は神秘的で、かつては遠方から多数の見物客が押し寄せたという。

 当初は毎年8月7日が祭礼日だったが、現在は8月の第2土曜に実施されている。そのいわれは、地元に伝わる古文書によると、大宝元(701)年8月8日に鹿島大明神が鬼を退治し、氏子を守り抜いた勝利の日で、「灯明を絶やさず朝夕拝むとよい」と言ったとされる。

 祭りは地元住民が協力して準備をしている。区長の佐藤隆夫さん(80)は「鹿島宮は地域にとってなくてはならない存在。鹿島宮の例大祭である鹿島の七日火は、将来も存続するようにしたい」と話している。

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 群馬県嬬恋村の地域計画の中核となる文化財は、浅間山による噴火災害の痕跡と、噴火がもたらした火山灰土壌の大地に広がるキャベツ畑のパノラマ景観だ。村の三方を囲む山々と、火山活動によって形成された高原で育まれた歴史資産だ。

 天明3(1783)年、浅間山の噴火があり、浅間山北麓(ほくろく)にある旧鎌原村は477人が犠牲となり、住民の8割以上を失う壊滅的な被害を受けた。鎌原観音堂は、村落で唯一残ったとされる建物で、県指定史跡。50段あった石段は、15段を残して埋没。昭和54(1979)年の発掘調査により、この石段に足をかけようとした瞬間に土石なだれにのみこまれた村人2人の遺体が収容された。

 高原地帯をめぐるパノラマライン沿いにキャベツ畑がパッチワークのように広がる様子を、村は文化的景観と位置づける。

 嬬恋村では大正期から寒冷な高地に適したキャベツ栽培が始まった。度重なる火山噴火がもたらした火山灰土壌「黒ボク土」は、農業には不向きだが、先人による努力の積み重ねで、夏秋キャベツ全国1位の生産量を誇るまでになった。広大なキャベツ畑の景観は、黒ボク土を克服して築きあげた高原野菜農家の努力の結晶だ。

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