人気を取り戻す木彫りのクマ

本物のクマと同じように冬眠から覚めたかのように、北海道の手彫りの木彫りのクマが復活しつつあります。

昭和時代（1926年～1989年）にお土産として人気だった精緻な工芸品は、インテリア雑貨や美術品、洋服のデザインなどとして再人気を博しています。

5月、東京の中心部にあるシックなビジネス＆エンターテイメント複合施設、東京ミッドタウン日比谷で展示販売イベント「Bears of Hibiya」が開催された。 展示されていた約200点の作品には、クマが立ったり、座ったり、その他の個性的なポーズをとっている様子が描かれており、クマが鮭をくわえている古典的なシーンをはるかに超えています。

４点を購入した茨城県つくば市の女性（３０）は「作家によってポーズや表情が違うのが面白い」と話した。 「3年前から集め始めました。」

イベントを主催する日比谷セントラルマーケットスタッフの北岡崇人さんは「30～40代の方に人気です。 初日は、お気に入りのアーティストの作品を買うために列ができました。」

この木像は、約100年前、尾張徳川家の旧家臣が北海道八雲町に移住してから初めて制作されたと言われています。

東京903会（903は「くまさん」と読むことができ、「クマ」はクマを意味する）と呼ばれる工芸品の研究グループを率いるフリー編集者の安藤夏樹氏によると、同一族の19代目リーダーは木工品を持ち帰ったという。ヨーロッパから伝わった熊の彫刻で、農家が冬に副収入を得るために作ることを推奨しました。

1950～60年代の北海道観光ブームでは、鮭をくわえた熊の彫刻が代表的な土産物となりよく売れた。 観光ブームが沈静化するにつれ、その人気は下火になりましたが、にわかに再び人気の対象になりました。

各地で展覧会も成功しており、インスタグラムで「木彫りの熊」で検索すると約３万件がヒットする。

昨年11月、東京に本拠を置くレストラン経営パートナーズダイニングは、東京都新宿区に「キボリ」という店をオープンし、店内を約1,000体の木彫りのクマで埋め尽くした。 高級雑貨店ビームスは昨年、クマをテーマにしたＴシャツやティーカップ、その他の木製グッズを製造したところ、あまりに売れ行きがよかったので、同社は追加生産するに至った。

なぜ突然の高騰なのか？

木彫り熊発祥の地、八雲市の木彫熊美術館で、学芸員の大矢重之氏がちょっと意外な説を披露した。 「観光ブームの頃のクマの彫刻とは異なり、最近のクマはサケをくわえていないからではないかと思います」と彼は言う。

大矢氏は、鮭をむしゃむしゃ食べるデザインは観光ブームの中で定着したと語った。 クマとサケの組み合わせは、北海道の端的なシンボルとして量産され、彫刻の「定番」ポーズとなった。

しかし実際には、当時でさえ、芸術家たちが創造性と技術を発揮して独自の工芸品を考案したため、すべてのクマが必ずしもサケを食べていたわけではありません。 博物館に展示されているさまざまな品物の中には、野球のバットを持ったクマや、体の特徴を持たない抽象的なものもあります。

「大量生産、大量消費の時代が終わり、本来備わっていた芸術性や技術力が見直されつつある」と大矢氏は語る。

北海道登別市ののぼりべつクマ牧場学芸員、坂本秀行氏は、クマの描かれ方のおかげで新たな人気が生まれたと考えている。 最近人気のデザインは、ずんぐりとした目や口の彫りがかわいらしいデザインです。 表情が全くない人も多いです。

「クマは体の割に顔が大きいので、ぬいぐるみのように愛嬌があります」と坂本さんは言う。

札幌市の彫刻家・山里実さんは「鮭バージョンを知らない若い人にとっては新鮮に映るのではないでしょうか」と話す。

半世紀ぶりのブームはファンだけでなく、新たなクリエイターも巻き込んでいる。

東京903の安藤さんは「木彫りのクマは洋風の家具とも相性が良く、モダンなインテリアにもよく馴染みます」と話す。 「彼らは決して時代遅れになることはありません。」

カラフルな復活

そう、富山県高岡市の家具アップサイクル会社は、家の中で「冬眠」しているクマに新たな魅力を与えるプロジェクトを2020年に立ち上げた。

Re-Bearプロジェクトでは、同社は不要な家具を引き取る際に、家の中で飾る場所を失った木彫りのクマも引き取る。 その後、アーティストに鮮やかな色でペイントしてもらい、数万円以上で転売することもある。

北海道出身でイエス社長の伊藤正則さんは「現代版の熊の彫刻を芸術作品として楽しんでもらいたかった」と話す。 「彼らを通じて、日本のものづくりの良さを新たな視点で感じてもらえれば幸いです。」

一方、八雲市の熊木彫美術館では、不要になった熊の彫刻作品や関連品の寄贈を受け付けているが、事前に手配する必要がある。

大矢さんは「歴史や文化を後世に伝えるための救出事業だが、できる限り再び家庭に飾ってほしい」と話した。