デビュー作「同志少女よ、敵を撃て」で本屋大賞を受賞した作家の逢坂冬馬さんが、第3作となる長編「ブレイクショットの軌跡」(早川書房)を出した。戦時下のヨーロッパを描いた過去2作から一転、主な舞台を現代日本に移し、断片化された世界を物語の力でつなぎ合わせる意欲作だ。
「小説家の作風がどこで決まるか。あるいは、どこで作風が固まったとみなされるか。そう考えたときに、最初の3作が重要なんじゃないかと漠然と思ったんです」
独ソ戦に駆り出された女性狙撃手を描く「同志少女~」で華々しいデビューを飾り、続く「歌われなかった海賊へ」でナチス体制下のドイツを舞台にした。「次も似たようなお話を書くと、私の作風はヨーロッパや戦争といった『素材』になってしまう。そうではなくて、素材を変えても残るのが作風ではないか」。まったく異なる題材を選べば「いままでには書けなかったものが必ず書ける。それでもなお通底するものとして、作風をつかんでほしかった」。
そうした作家の思いは知らず…