新築マンションの転売を5年間できないようにして欲しい――。東京都千代田区が不動産業界に行った要請に、業界側は根拠と目的があいまいだとして、説明を求めている。果たして、マンション価格の高騰を抑える実効性はあるのか。区の要請によって、波紋が広がっている。
千代田区は7月18日に「区内の投機目的でのマンション取引等に関する要請について」と題する文書を公表。大手ディベロッパーなどでつくる一般社団法人「不動産協会」(理事長・吉田淳一三菱地所会長)に対し、税金が使われる再開発事業などのマンションは5年間転売できないよう「特約」をつけることなどを求めた。
区側は「値段が高すぎる」という区民の声などが理由だと説明し、文書では「投機目的のマンション取引」が増えると「区内に居住したい方々が住めない」と指摘した。
対象となる再開発計画は区内に5件程度ある。強制力はないものの新築マンション販売が鈍るという観測から、大手ディベロッパーの株価が一時大きく下がり、協会側は、要請の根拠や目的に疑問の声を上げた。
吉田理事長は7月下旬の会見で、転売の禁止は、個人の財産権や私権の制限につながることを念頭に「法律上、どこまで規制できるのか」と指摘。さらに、5年間の転売制限で「(中古マンション価格が)抑えられるのかわからない。合理的制約なのか疑わしい」と疑問を呈し、引き続き区と協議して説明を求める考えを示した。
「区の要請、根拠がないのでは」 不信感隠さぬ、不動産業界
同協会幹部は、高騰の理由は「資材費や人件費の高騰、住宅需要の高まり」だとしつつ、「我々も短期転売はよくないと思っている。ただ、区の要請は根拠がないのでは」と漏らした。今回の要請を受けての対策は、考えていないという。
不動産経済研究所によると、7月に東京23区で販売された新築マンションの平均価格は1億3532万円と、前年同月比で24.4%上がった。
民法579条は、不動産の売り主は「特約」という事前の取り決めがあれば「買い主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる」と定めている。千代田区は、この「買い戻しの特約」による転売の制限を想定しており、新築マンションの販売例もある。
記事後半では、転売対策で「買い戻し特約」がついた住友不動産や三井不動産分譲の新築マンションの例やその実効性、ディベロッパーの本音に迫ります。
2008年築の「シティタワ…