夫婦で営んできた海沿いの旅館は、押し寄せた土砂がこびりついたまま。水たまりも残る。「一緒に頑張ろう」と言い合える夫は、もういない。能登北部を襲った豪雨から、21日で半年になる。
石川県珠洲市真浦町の旅館「海楽荘」。2階の客間の窓際に、日本海の水平線を望むように、経営者だった池田幸雄さん(当時70)の遺影が置かれている。
「海が好きだったお父さんが、いつも海を見られるようにね」
妻の真里子さん(69)がしつらえた。そばの座椅子には、幸雄さんが着ていた調理服がかかる。
32の客室と宴会用の大広間があり、赤いじゅうたん敷きのロビーが客を出迎えていた。今はじゅうたんがはがされ、1階の廊下に水がたまっているところもある。
土砂に埋まっていた大浴場はボランティアの助けで入れるようになったが、大きな窓は流木に突き破られたまま。至るところに泥が入り込んでいる。
「お父さんが生きてたら旅館…