豊橋中央―日大三 八回裏日大三無死、田中諒(右)は勝ち越しの左越え本塁打を放ち、生還してガッツポーズ。左は捕手松井=滝沢美穂子撮影

(11日、第107回全国高校野球選手権大会2回戦 日大三3―2豊橋中央)

 押され気味の試合展開だった日大三に勝利を呼び込んだのは、2年生で4番にすわる田中諒の一発だった。

 八回裏、先頭で打席に向かう田中諒は直球に狙いを定めた。前の五回の打席、2死一、二塁の好機に詰まらされ、セカンドフライに倒れたことが頭にあった。

 2ボールからの3球目、内角寄りに来た直球をとらえると、ナイター照明に照らされた白球は左翼席に飛び込んだ。「今まで味わったことがない」と言うほどの大歓声に包まれ、塁を周りながら右手を高々と挙げた。

 憧れの甲子園での初戦。実は、前夜の食事がのどを通らないほど緊張していたという。試合前のシートノックでも、硬くなって普段と違う自分を感じていた。一回裏、2死一塁で初打席がまわってきたが、キャッチャーへの邪飛に倒れた。

 救ってくれたのは、3年生ら周りの声だった。凡退した田中諒を「次はやるぞ」と励ました。これで緊張が解けた田中諒は、三回裏には中前へ適時打を放つ。豪快な自分のスイングを、徐々に取り戻していった。

 身長180センチ、体重92キロと恵まれた体を持つ。柔道は初段の腕前。バレーボールやサッカーも得意だ。持ち前のパワーは、ウェートトレーニングよりも、ティー打撃などバットを振り込んでつけたという。昨年、本格的に導入された低反発バットも「最初は飛ばないと思ったけど、今では変わらない」と話す。

 西東京大会でも準決勝でサヨナラ本塁打を放ち、ここ一番での勝負強さを見せていた。三木有造監督は「狙い球を絞り、思い切って自分のスイングができる選手」。主将の本間律輝(3年)も「本当に頼りになる4番打者」とたたえる。

 雨中の接戦をものにし、3回戦へ進んだ日大三。試合後、報道陣に囲まれた田中諒は「うれしさが半端ない。甲子園はいい場所です」と笑顔を見せた。

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