「また見つかりました」。旧知の取材先からそんな連絡をもらった。
「朝鮮半島で最古」とされる星図の木版刷り。拓本が残る韓国でも確認されたことはいまだなく、日本でも4例目という貴重なものだ。
しかも、これまでとは違って古刹(こさつ)に残るもので、その由来に近づけるかも知れないという。さっそく見せてもらうため、京都に足を運んだ。
- 記者たちの古都こぼれ話
専門家が考える「可能性」
訪ねたのは、京都市山科区の毘沙門堂門跡。8世紀初めに創建された天台宗の寺院だ。
寺に伝わる古文書類を整理してきた石田潔さん(81)が、丸められた大きな天文図を慎重に広げてくれた。縦137センチ、横87・5センチ。紙の周囲は劣化し、所々に虫に食われたとみられる穴も空いている。
中央に天の北極を中心とする円形の星図が描かれ、その下には中国伝統の宇宙構造論と、この天文図の作成の経緯がびっしり。14世紀末の朝鮮王朝時代につくられた「天象列次分野之図(てんしょうれつじぶんやのず)」の木版刷りで、間違いないという。
この図は日本独自の暦を初めてつくった江戸幕府の初代天文方・渋川春海(はるみ)が、1677年に「天文分野之図」を作成した際も参考にしたとされる。
寺が明治37(1904)年…