Smiley face
写真・図版
米議会で成立した移民法を、日本では「排日移民法」と呼んで強く非難した。1924年4月18日の東京朝日新聞朝刊には、米国を象徴する男性「アンクルサム」が小柄な男性の顔を手でつかみ、紳士協定と書かれた紙を踏みつける「アンクルサムの狂暴沙汰」と題する挿絵が掲載された

「100年をたどる旅~未来のための近現代史」日米編⑦

 米国の孤立主義の伝統を打ち破ったのが、1913年に第28代大統領に就任したウッドロー・ウィルソン(民主党)だった。学術研究で政治学博士号を持ち、プリンストン大学の総長を務め、のちに国際連盟の創設に貢献したとしてノーベル平和賞を受賞するエリート大統領の誕生だった。

 ウィルソンは、米国が経済力に見合うだけの国際的責任を果たすべきだと考えた。また自国に民主主義と平和、繁栄をもたらしたのだから、世界にも同じように民主主義をもとにした国際秩序をもたらす義務があるとの信念を抱いていた。筋金入りの国際主義者であり、こうしたリベラルな国際主義を「ウィルソン主義」ともいう。

 当初は第1次世界大戦への関与に慎重だったウィルソンは17年4月、参戦を決めた後の議会演説でこう宣言する。

 「正義は平和よりも尊い。民主主義、小国の権利と自由、すべての国に平和と安全をもたらし、世界全体を自由にする正義を普遍的に支配させるために戦う。こうした任務のためであれば、私たちは命と財産、すべてを捧げることができる」

ウィルソンの危機感「次の世界大戦が起こる」必死で訴えたが…

 参戦の目的は、列強同士の争いが絶えない欧州の不安定な状態を終わらせ、法や理性、交渉に基づく国際秩序を樹立するためだった。

 ウィルソンの試みは、軍事的…

共有