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第71回日本伝統工芸展陶芸部門で、35回目の入選を果たした萬古焼の清水酔月さん=2024年8月26日午前11時22分、三重県四日市市、鈴木裕撮影

 萬古焼(ばんこやき)の窯元「酔月(すいげつ)窯」を構える陶芸作家、清水酔月さん(80)=三重県四日市市=が、第71回日本伝統工芸展(日本工芸会、朝日新聞社など主催)の陶芸部門で35回目の入選を果たした。「日本伝統工芸展は、伝統を重んじるだけではなく、新しい挑戦を続けることが求められる。レベルアップを常に求めていくための刺激になっている」という。

 入選作「萬古縞文急須」は、萬古焼伝統の急須に、高圧で砂を吹き付けて削るブラスト技法で模様を施した。石材を加工する技法をヒントに酔月さんが開発したオリジナル技法で、「つや消しになることで、やわらかさが生まれる。さらに、芸術性の高い繊細な模様を表現できる」と話す。

 2016年の伊勢志摩サミットの晩餐(ばんさん)会で使われた酒杯を手がけたことで知られるが、「急須は萬古焼の原点」とこだわりを持つ。3月に東京の日本橋三越本店で開いた個展では、明治時代に窯を開いた初代も用いたという「木型萬古」の新作も披露した。「急須は、四日市の代表的な仕事。これからも急須の作品を出品し続けたい」と力を込める。

 21日付で入賞・入選者が発表され、今回は長男で陶芸作家の潤(じゅん)さんと同時入選だった。昨年までは4回続けて、次男の潮(うしお)さんを含め親子3人で入選してきた。「国内の伝統産業はどこも後継者難で元気がない。幸いにも後継ぎに恵まれており、子どもたち2人とともに、伝統を重んじながらも、時代に合った萬古焼をつくっていきたい」と話していた。(鈴木裕)

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