【動画】フランスの高齢者施設で、コミュニケーション「パロ」を使って高齢者のケアにあたっている=山田史比古撮影

フランス・ブーローニュビヤンクールの高齢者施設で、パロを使ったものなどグループセッションを担当するルムアーニュ・マガリさん(右)と、ブルータン・ミシェルさん=2024年9月17日、山田史比古撮影

 人工知能(AI)を搭載した、日本発のロボットを、高齢者のケアに活用する動きが広がっている。ヨーロッパでは、薬物療法に代わるケアの手法として注目している国もある。

フランスの高齢者施設では、週に3回、担当者がパロとともに高齢者のところをまわる。担当のブルータン・ミシェルさんが、認知症の人たちのユニットを訪ねると、「かわいいねえ」などと言いながら抱きしめる人もいた=2024年9月17日、フランス・ブーローニュビヤンクール、山田史比古撮影

 9月17日、フランス。パリ市に隣接するブーローニュビヤンクール市の高齢者施設で、アザラシ型のコミュニケーションロボット「パロ」を使ったセラピーが実施されていた。

 認知症の人たち30人ほどが過ごすスペース。パロを抱えたスタッフが、希望した人に順番に近づき、ふれあってもらう。

 「かわいいよねえ」

 背中をなでる。「キュー」。パロが首をもたげ、鳴き声を出す。口づけをする人、じっと抱きしめる人もいた。

 パロは、日本の産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)の上級主任研究員、柴田崇徳さんが生み出した。身体性のAIを搭載。毛皮をなで、話しかけることで、パロも鳴き声などで喜んだような反応を示し、「飼い主」の好みも学ぶ。相互作用を通して関係性を築くことができる。

 このパリ近郊の施設では、6年前にパロを導入した。運動や音楽、認知能力の訓練など、入居者向けに多くのプログラムがあるなかで、パロを使うセッションは毎週月曜から水曜に実施している。

フランスの高齢者施設では、週に3回、担当者がパロとともに高齢者のところをまわる。担当のブルータン・ミシェルさんが、認知症の人たちのユニットを訪ねると、「かわいいねえ」などと言いながら抱きしめる人もいた=2024年9月17日、フランス・ブーローニュビヤンクール、山田史比古撮影

 社交的、文化的な活動の責任者を務めるルムアーニュ・マガリさんによると、認知症などで言語によるコミュニケーションが難しくなった人や不安が強い人、抑うつ傾向がある人などのうち、パロとのふれあいを希望する人が対象になる。

 マガリさんら担当者は、パロの仕組みやメンテナンス、どのような効果があるのかなどを事前に学んでいる。この施設では外部からセラピー犬を連れてくることもある。動物を施設で飼えば、世話も必要になる。パロも使用後の手入れは必要だが、死ぬことはない。

 高齢者には必ず、これはロボットだと説明する必要がある。でも、認知症の人など、生き物だと思っている人も、ロボットとわかったうえでかわいがる人もいる。担当する一人、ブルータン・ミシェルさんは、「どちらであっても本人にいい効果があることが重要」と話す。

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