全国的にワイナリーが増える中で、東北もその波に乗っている。都道府県別のワイナリー数は6県全てが20位以内に入り、東日本大震災でゼロになった宮城では8を数える。東北で最多の山形では、5月の大型連休明けに日本最大級をうたうワインイベントが催される。

震災で一時ゼロの宮城、秋保がパイオニア

 東北でお酒と言えば、日本酒というイメージだろう。山形県村山市の「十四代」など、名の知られた銘柄が各県にある。

 地味だが、ワイン生産も盛んだ。宮城県は例外で、山元町に唯一あったワイナリーが東日本大震災の津波で流されて廃業した。

宮城県のワイナリー拡大に尽力している秋保ワイナリーの毛利親房さん=2025年2月9日、仙台市太白区、八鍬耕造撮影

 宮城のパイオニアが、仙台市郊外の温泉地、秋保(あきう)に2015年にワイナリーを立ち上げた毛利親房(ちかふさ)さん(56)だ。仙台市の設計事務所に勤務していたが、県内のワイナリーがゼロになったことを知り、復興を後押ししようと起業した。ワインづくりは一から覚え、ブドウの栽培技術は山形県南陽市のワイナリーで学んだ。

 毛利さんは、新たに立ち上げようとする人を積極的に受け入れ、栽培や醸造を経験してもらっている。

 仲間を増やすための取り組みは、着実に成果を上げている。宮城県内のワイナリーは8社に増えた。

 秋保で栽培や醸造を経験した男性がワイナリーを立ち上げた例として、20年にオープンした被災地にある南三陸ワイナリー(宮城県南三陸町)がある。震災をきっかけにボランティアで東北を訪れ、「復興には新しい産業」が必要だと思った。

 「予備軍」も数多い。

 同県白石市出身の荒井謙(ゆ…

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