佐藤武嗣と考える外交・安全保障と日本の針路

 4月10日に米ワシントンで開かれた日米首脳会談では、岸田文雄首相とバイデン米大統領が「日米同盟は前例のない高みに到達した」ことを確認しました。その象徴の一つが、自衛隊と米軍の指揮統制について「シームレスな統合」を目指すことで合意したことでしょう。

 「指揮統制」とは、部隊を運用する役割分担や指揮命令系統をあらかじめ定め、指揮官が隷属・配属された部隊に対して権限を行使し、部隊を効果的に動かすことです。確かに、有事の際、自衛隊と米軍が調整・連携することは必要でしょう。しかし、自衛隊が、米軍の隷下に「駒」として組み込まれることは、独立国家として好ましいとはいえません。

 「統合」された枠組みをどう設計するのか、今後、日米は外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)などで議論を開始します。私も含め、多くのジャーナリストは、新たな枠組みで、日本の指揮権の独立性や主体的判断をどのように担保するかに焦点をあてて、この議論を追いかけることになるでしょう。

写真・図版
歓迎式典でバイデン米大統領(左)と握手を交わす岸田文雄首相=2024年4月10日、米ワシントン、岩下毅撮影
  • 日米首脳会談での日米首脳共同声明

 ですが、少し違った視点も皆さんに紹介したいと思います。「指揮統制の統合」をめぐっては、日本と米国がその必要性で一致する一方で、取材を進めると、異なる思惑も交錯していることが分かります。今回は、その思惑の違いにも焦点を当てて、お話ししたいと思います。

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外交・安保政策が専門の佐藤武嗣編集委員が書き下ろす「佐藤武嗣と考える外交・安全保障と日本の針路」は、有料会員限定で月1~2回、水曜にメールで配信します。

「指揮統制の統合」議論の背景

 まず最初に、なぜいま、「指…

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