日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)をめぐり、政界や民間から様々な活用案が浮上している。日銀が約14年かけて購入したETFの総額は約37・2兆円。年約1.2兆円の運用益が「埋蔵金」として注目される一方、株価に左右される資産を日銀が持ち続ける危うさを指摘する声もある。

 ETFはTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価などの指数に連動して値動きする投資信託で、普通の株式と同じように市場で取引できる。ETFを保有するとTOPIXを構成する株式に幅広く投資することになり、日銀が大量に購入したことによって株価全体を下支えする効果がある。

時価総額は74兆円、含み益37兆円

 日銀が29日発表した2023年度決算によると、3月末のETF保有額は簿価で約37・2兆円。時価は約74・5兆円に達し、東証プライム市場の時価総額の約7%を占める。含み益は約37兆円に達する。国の今年度一般会計予算の歳出で最も多い社会保障費(約37兆円)に匹敵する額だ。

 日銀によるETF購入が始まったのは、リーマン・ショック後の10年。金融市場に資金を供給するためだったが、景気後退や円高で低迷した株価の下支えを狙ったとみられていた。

 13年にはデフレ脱却を掲げる黒田東彦(はるひこ)前総裁のもとで、日銀が購入額を年1兆円に増やした。翌年に年3兆円、16年には年6兆円などと拡大の一途をたどり、コロナ禍の20年には上限を12兆円としたことで、残高が積み上がった。

 株式配当などで年1兆円を超…

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