近鉄奈良駅から北に歩いて数分のところにある奈良市中筋町の「大西湯」は、昭和初期に開業し、その立地から地元の人からも観光客からも愛されてきた銭湯だ。店主の大西弘一さん(61)と母・好子さん(87)が番台を守ってきたが、体力的に厳しくなったことから、11月24日で約90年の歴史に幕を下ろすことになった。
シンプルな外観に、木製の味わい深いロッカー、そして浴場のタイル絵。そんな「昭和レトロ」の雰囲気に満ちた大西湯は1935年ごろ、弘一さんの祖父・正雄さんがこの地に開業した。その後、正雄さんの次男である貞夫さんが継いで、妻の好子さんと2人で切り盛りした。
好子さんは24歳の頃、結婚と同時にここで働き始めた。60年以上前のことだ。実家にはテレビがなかったため、近所の人たちが大西湯に集まってテレビを見る光景が印象に残っているという。
番台での会話も楽しみの一つ…