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取材に応じたでんぱ組.incの古川未鈴さん=2024年5月7日、東京都新宿区、滝沢貴大撮影
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 秋葉原の小さなステージから出発し、メンバーの「暗い過去」もさらけ出すことで人気を博した7人組アイドルグループ「でんぱ組.inc」が、来年、16年間の活動に幕を下ろす。立ち上げメンバーの1人で、現在は子育てしながら活動を続ける古川未鈴さんに、これまでの歩みや終幕に向けた思いを聞いた。

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 転勤族の家庭に生まれた古川さんは、転校続きだった小中学生時代、周囲になじめず、いじめを受けていた。靴や水着を隠されたり、廊下で制服を脱がされかけたり。「(当時活躍していた)『SPEED』や『モーニング娘。』のようなキラキラした存在になれたら、見返せるんじゃないか」。そんな思いから「全てが始まった」という。

 だが、オーディションはことごとく不合格に。「だったら、自分で作ればいい」。高校中退後、秋葉原のライブ&バー「ディアステージ」で働き始め、2008年に同僚と2人でアイドルユニット「でんぱ組」を結成した。

 同店を経営する東京芸大音楽学部出身の福嶋麻衣子さん(もふくちゃん)がプロデューサーを引き受けてくれることに。提案されたのは、「『電波ソング』を歌う唯一無二のアイドルになること」だった。「電波ソング」とは、アニメやゲームの主題歌として発展した、『萌え』を前面に出した歌詞やアップテンポなメロディが特徴の楽曲だ。

 夢への一歩を踏み出したものの、収入と言えるほどの売り上げはなく、ステージ衣装は「渋谷で1着800円くらいで買ったワンピース」。新メンバーも加入したが、アイドルファンからは聞き慣れない「電波ソング」を忌避され、逆に「電波ソング」が浸透していたアニメファンからも「3次元のアイドルは興味がない」と見向きもされなかった。

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