会見する日本銀行の植田和男総裁=2025年7月31日午後4時14分、東京都中央区、浅野哲司撮影

 日本銀行など各国の中央銀行は「物価の番人」とも呼ばれる。歴史的にも国民生活を圧迫するインフレを抑えることは中央銀行の最大の任務だからだ。なかでも自国通貨、日本でいえば「円」の価値を守ることで物価を安定させること。それは中央銀行にとって欠かせない大きな使命だ。

 だがいま、日銀がその使命を果たしているとは言いがたい。7月31日の金融政策決定会合(年8回開催、メンバーは総裁以下9人)でもそれが鮮明になった。日銀はこの日、今のような物価高が続くなかでも、現行の極めて低い政策金利0・5%を据え置くことを決めた。金利の現状維持は4会合連続となる。

 日銀が利上げに動かない間も消費者物価上昇率は高止まりしたままだ。総務省が直近で発表した6月の消費者物価指数(総合)は前年同月比3.3%の上昇で、3%超えは7カ月連続である。生鮮食品を除く総合指数も3.3%上がり、やはり7カ月連続の3%超えだ。

 日銀が「インフレ目標」として設定している「2%」を基準にすれば、生鮮食品を除くベースで、すでに39カ月連続でそれを上回る物価高が続いている。

 こうなったら、ふつうの中央銀行なら政策金利を引き上げるところだ。金融を引き締めて「物価を下げる」政策を採るのが常道である。ところが日銀が現実にやっていることはまったく逆だ。政策金利を極めて低い水準にとどめ、「物価を上げる」政策を続けている。

 いまの物価高は、いわば「日銀インフレ」と言ってもいい。

物価高対策に「利上げ」がない不思議

 先の参院選の最大の争点は物…

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