アナザーノート

アナザーノート 木村裕明記者

 「2020年代に全国平均1500円」。石破政権が掲げた最低賃金の引き上げ目標が波紋を広げている。

 岸田前政権が掲げた「30年代半ばに1500円」の目標を大幅に前倒しし、実現には年平均7.3%の引き上げが必要。過去10年の引き上げ率は年平均3.1%で、2倍以上のペースになる。中小・零細企業への影響はかつてなく大きく、経済界の関心も高い。

 経済同友会の新浪剛史代表幹事は、政権が発足した昨年10月1日の記者会見で「我が意を得たり」と新たな目標を歓迎した。

 一方、全国の中小企業が加入する日本商工会議所の小林健会頭は同3日の会見で「地方のインフラを担う企業には最低賃金しか支払えないところが結構ある」と指摘。支払い能力以上の引き上げは小規模事業者の廃業などを招き、地方の生活を支える産業・商業インフラを崩す恐れがあるとして、すぐさま牽制(けんせい)球を投げた。「石破内閣の経済政策の目玉である地方創生にとって由々しき問題になる。大幅な引き上げは両刃の剣になりかねない」

政労使会議で発言する石破茂首相(手前)=2024年11月26日午後0時55分、首相官邸、岩下毅撮影

 驚いたのはその翌日。経団連、日商、同友会の経済3団体が石破政権への政策要望をそれぞれ出す中、同友会は最低賃金を今後3年以内に1500円に上げるよう求めたのだ。実現には年率12%超の引き上げが必要だ。新政権の目標をも上回る要望の狙いは何か。

 石破茂首相との面会後、首相…

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