【動画】動物園で育てたライチョウ、野生復帰に向けて中央アルプスに到着=高木文子撮影
国の特別天然記念物で絶滅危惧種のライチョウの「復活作戦」をめぐり、人工飼育された個体を野生復帰させる準備が始まった。生息数が順調に回復している中央アルプスでは、放鳥は今年で最後。ライチョウを人の手で山に運び、一夜明けるまでの様子を追った。
10日午後0時半すぎ。中央アルプスのふもとの長野県駒ケ根市の駐車場に、ライチョウと飼育担当者を乗せた車が次々にやってきた。
飼育担当者が緊張した面持ちで段ボール箱のふたを開け、洗濯ネットに包んだライチョウを取り出した。1羽ずつ無事を確かめ、体重を測って記録した。
人工飼育したライチョウを野生復帰させる技術を確立するため、環境省は昨年から動物園などで育てた個体を中央アルプスに放鳥している。今年は国内4カ所で飼育した約20羽を、2回に分けて山に移す計画だ。
ただ、現場には緊張感が漂っていた。昨年の移送時に暑さで3羽が死亡したからだ。今年は各園が温度管理を徹底し、箱に保冷剤を詰めて20度前後に保った。箱には通気口や温度・湿度を測るセンサーもある。3羽を運んだ市立大町山岳博物館(長野県大町市)の一行は、10分おきに職員が箱の温度を確かめながら移動したという。
朝から5時間かけてドライブしてきた那須どうぶつ王国(栃木県那須町)のライチョウは、この駐車場でえさのコケモモの実をもらって一服。「おなかもすいているでしょうから」と職員が大町の職員におすそ分けして、場の空気がなごんだ。
ライチョウを積んだ段ボール箱はこの駐車場で環境省に引き渡され、さらに車を乗り継いで、午後2時半ごろ駒ケ岳ロープウェイの千畳敷駅(標高2612メートル)に運ばれた。
箱を背負って急な登山道、強まる風雨
駅を出ると、氷河地形で有名…