2023年4月14日、毎年恒例の祭日にスピーチを行う、ハマス最高幹部のヤヒヤ・シンワル氏=ロイター

 昨年10月のイスラエル奇襲を計画した首謀者とされる、イスラム組織ハマス最高幹部のシンワル政治局長が殺害された。ハマスにはどのような打撃があるのか。米国はどのような展開を期待しているのか。日本がとるべき対応は――。鈴木啓之・東大特任准教授(中東政治)に聞いた。

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この展開を「想定」?ハマスはどうなる

 イスラエルは当初からハマス指導者の殺害を目標に掲げてきた。その中でも名指しをされていたシンワル氏の殺害は十分起こりうる展開で、ハマスも想定済みだっただろう。

 少し予想外だったのは、イスラエル軍がドローンで本人を撮影できるほど直接接近でき、遺体の確認まで行われたことだ。地下の隠れ家への空爆などで殺害されて生死不明の状態が長く続くのではなく、このような明確な形で殺害されることは、イスラエルも想定していなかったのではないか。

 ハマスの体制に変化を与えるかは疑問だ。

 ハマスは集団合議制をとり、幹部一人が逮捕や殺害をされても、組織の意思決定や指導部の態勢を維持できるようにしている。過去にイスラエルと対峙(たいじ)した経験ゆえのことだ。

 シンワル氏は、7月に殺害されたイスマイル・ハニヤ政治局長の後継だが、軍事部門でキャリアを積んできた人物で、対外的な駆け引きにたけているわけでもない。他の幹部を政治局長に据えない判断をした結果、就任した形だ。また、8月に指導者に選出されたばかり。指導的立場を十分に得ているとは言えなかった。他にも有力幹部はおり、今の指導部はシンワル氏がいつか殺害されることも想定していたはずだ。

 停戦交渉への影響もほとんど…

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