2025年1月20日、米ワシントンでトランプ大統領の就任式に出席した、連邦最高裁のロバーツ長官=ロイター

 不法移民の強制送還をめぐって裁判官を「弾劾(だんがい)されるべきだ」と批判したトランプ米大統領の言動について、米連邦最高裁のロバーツ長官は18日、弾劾を否定する声明を出した。トランプ氏は自らに異論を差し挟む判事らを公然と批判してきたが、最高裁長官が苦言を呈する異例の展開となった。

  • 【これまでの経緯は】トランプ政権がギャング追放、地裁の差し止め従わず 法廷闘争に発展

 トランプ政権は15日、1798年に制定された「敵性外国人法」を発動させ、ベネズエラのギャング組織のメンバーら250人以上を国外追放した。だが首都ワシントンの連邦地裁は同日、国外追放の合法性を審理するため、政権に一時差し止めの命令を出していた。

 トランプ氏は18日、SNSへの投稿で担当判事を「オバマ(元大統領)によって選ばれた過激な左翼だ」と断じ、弾劾されるべきだと批判。「彼は大統領に選ばれたわけではない。私は圧倒な支持を得て勝った。有権者が私に望んだことをやっているだけだ」などと訴えた。

 この投稿を受けて、最高裁のロバーツ長官は同日、「2世紀以上にわたり、司法判断に対する不服を理由に弾劾を行うことは適切ではないと確立されてきた。そのために通常の上訴手続きが存在している」とする声明を出した。司法判断への不満を理由に弾劾を求めたトランプ氏の考えを、正面から否定した格好だ。米メディアは、「最高裁長官が公の場で声明を発表することはほとんどない」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と報じられている。

 連邦最高裁では9人の判事のうち保守派が6人を占めており、ロバーツ長官も共和党のブッシュ(子)元大統領によって指名された保守派の一人だ。共和党のトランプ政権にとっては有利な状況になっているが、今回はトランプ氏の言動は行き過ぎだと釘を刺される格好となった。

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